第27代住職 大八木正雄

住職閑話

西田敏行さんを偲ぶ

10月17日、国民的俳優の西田敏行さんが亡くなられました。大好きな役者さんでしたのでとても残念です。

思い出すのは、随分昔のお風呂掃除用洗剤のコマーシャル。
お風呂の掃除をしなくちゃと思いながら、なかなか腰が上がらず葛藤している西田さんに、「掃除やってくれた~?」と奥さんの声。思わず頭をかきむしりながら「今やろうと思ったのに、言うんだものなー!」

思わずニコッとしてしまうこのコマーシャル。本当は弱い人の心を、西田さんは面白おかしく表現されます。それができるのは、西田さんのお人柄によるところ大だからです。

やらなくちゃと思いながらも、なまけ心がつい出てずるずると先延ばしにしている時、「どうなってる?」って問われたら、半ば逆ギレのような気持ちで、「ちょうど今やるところ!」。こんなことってありますよね。とっさの防衛反応でしょうか。すっかり忘れていれば、素直に「ごめん」と言えるのですが、なまじ気にしていたから素直になれない。本当は弱い心を持っているのに、一生懸命虚勢を張るのです。素直になれば楽なのに、それが出来ない…。人のこころは面倒くさいものです。

ただ、お風呂掃除ならば大きな問題ではありませんが、大事な仕事となれば別。だから、大事な仕事はそんなことにはなりません。でも、とても大事なのに、ついつい先送りしている事があります。それは私の「いのち」の問題です。いずれ終わりを迎えるいのちについて、ちゃんと受けとめる準備をしなくちゃいけないのに、ついつい先送りしてしまっていそうです。どんな準備が必要なのか分からないから、手が付けられないのかも知れませんね。でもその時が来て、「今やろうと思ったのに、言うんだものなー!」ではもう間に合いません。

西田敏行さん:「生ききる。自分の死を自然死の中で迎えることができる方は本当に幸せ」と仰りながらも、その通りにはならない現実もふまえて、「夜、寝る前は必ず1回は『あした、死んでいたらどうしようかな』と考えます。そんな人生、なんか幸せだな、と思います」と、生ききることが死を受け入れることだと語っておられました。決してコマーシャルのようなことはありません。

住職:「いのちのことは、是非仏さまに尋ねてください。仏さまは、いのちの専門家です」

林修先生:「いつやるの 今でしょ」