第27代住職 大八木正雄

住職閑話

「考えよう」 ~ドラマ 御上(みかみ)先生~

教育改革に情熱を注ぐ、東大卒のエリート文部科学省官僚・御上孝(みかみたかし)は、「官僚派遣制度」により、私立隣徳学院(りんとくがくいん)高校の3年2組の担任として現場に赴任することになりました。熱い思いを胸に抱きつつも、官僚らしい冷静な態度で生徒を導く姿は、これまでの熱血先生とは異なる、新しい先生像を感じさせます。
物語のすべてをここで語ることはできませんが、さまざまな問題が起こる3年2組で、御上先生がいつも生徒たちに語りかける言葉があります。それが、「考えよう」です。

3年2組の生徒、千木良遥(ちぎらはるか)。彼女は親の力によって、不正に入学させられた子でした。その事実を知ったとき、彼女は絶望し、苦しみ、深い孤独に沈みます。一方、クラスメイトの神崎拓斗(かんざきたくと)。ジャーナリストを目指す彼も、千木良の秘密を知り、正義と友情の狭間で心を引き裂かれるような葛藤を味わいます。この二人の姿は、胸に迫るようなリアルさで描かれていました。

そして学級会。千木良遥はクラスの前で自らの秘密を明かします。重たい沈黙が教室を覆う中、御上先生は静かに皆に問いかけました。「考えよう」と。

続けてこう語ります。
「この世には、答えの出ない問いが数多くある。ハゲワシと少女、貧困とテロ、安楽死…。それらを考え続けることは、とても苦しいことだ。考える力とは、単に答えを出すためのものではない。考えても考えても答えの出ない問題を、投げ出さずに考え抜く力だ」そして最後に、こう締めくくるのです。「苦しみの中から選び取った答えは、きっと弱者に寄り添うものになる」

 

とても考えさせられるドラマでした。
特に御上先生の最後の言葉、「苦しみの中から選び取った答えは、きっと弱者に寄り添うものになる」が心に残ります。現代社会に漂う閉塞感、SNSにあふれる誹謗中傷。それらは思考を放棄し、弱者を見捨てることから生まれるものかもしれません。御上先生の言葉は、そんな現実に静かに、しかし鋭く一石を投じていると感じました。

「生答えの出ない問い」に、誰もが人生の中で立ちすくむことがあります。しかし、あきらめずそれを考え抜くところに人生の意味が見えてきます。それは、モノに囲まれることでもなく、成功を手にすることでもなく、苦悩し、葛藤し、考えて、考えて選び取った答えに、静かに頷いてくれる人がいたということ。見えなかった「生まれてきた意味」が、姿をあらわします。

宮沢賢治の言葉をお借りして、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 考エヨウ」