第27代住職 大八木正雄

住職閑話

鬼の言い分

鬼の言い分

「鬼はそと!福はうち!」
今月は鬼退治の節分月。しかし、最近は「豆まき」より「恵方まき」の方が注目されているように思います。豆まきには福と鬼が登場しますが、恵方まきには福だけですね。現代人は鬼には関心無いのでしょうか。ちょっと気になるところです。さて、節分に豆まきをするのは、邪気を払う力のある五穀のひとつである豆で、魔(ま)を滅(め)っすると物の本に書いてありました。 鬼は邪気、魔物ですから、現代の人たちには余りピンとこない存在なのかも知れません。

ところで、私たちは時間を持て余したり、興味の無いことに付き合わされると「退屈だ」と言ったりします。退(しりぞ)いて、屈することが、なぜ時間を持て余したり、嫌気がさしたりすることを意味するのでしょうか。実はこの退屈は、仏教由来のようで、辞書に「修行の苦難に負け、精進の気をなくすこと」とありました。つまり、なまけ心が出て、つらい修行に屈して投げ出してしまったら、すべきことが無くなってしまったと言うことです。このなまけ心は仏道修行だけで無く、私たちの日常生活のそこら中で顔をみせるやっかいな心であることは、皆さんもよくよくご存知ですね。
魔物はささやきます。「寒いだろう。まだまだ間に合うから布団の中にいろ」とか、「食べたいんだろ?それくらい食べてもちゃんと運動すれば問題ないから安心しろ」とささやくのです。私の心の中に魔物、鬼がいるのです。

鬼に負けてはなりません。豆(魔滅)のような強い心で、心の中に潜む鬼をやっつけましょう。そうすれば、きっと充実した生活が開けることでしょう。くれぐれも鬼に負けないようにしましょう。

えっ、もし負けてしまったらって?

それはとてもいい機会です。鬼にお願いをして、鬼の言い分を話してもらってください。

鬼に対する見方が変わるかも…。