第27代住職 大八木正雄

住職閑話

熟年離婚

先日、朝食の後、坊守(妻)とワイドショーを見ておりましたら、熟年離婚の特集が始まりました。少しイヤな予感が…。チャンネルを変えるのもヘンだし、知らぬ顔をしてテレビに集中しました。番組では専門のカウンセラーが、熟年離婚は妻から切り出す方が多いことや、それに至るいくつかの原因を紹介されていました。

ケース1「きっかけは早期退職。いったん歯車が狂うと、何もかもイヤになってウンザリ」
定年退職後夫が家にいる時間が長くなり、妻の家事を手伝うわけでもなく、ダラダラしているというのです。実は、私も3年ほど前に勤めを辞めて在宅の時間は多くなりましたが、できるだけ用事を作り、ダラダラはしていないつもりです。しかし、坊守の食事の負担は確実に増えました。かつ、家事はそんなに手伝っていません…。

ケース2「一昨年、私一人で在宅介護していた義母が他界、緊張の糸がプツリと切れた。その瞬間、自由でいたいと離婚を決意した」
番組では、夫の母の介護をする妻を尻目にゴルフに出かける夫が紹介されていました。坊守「これはダメでしょう!」、私もそう思います。

ケース3「ずっと夫に本音が言えなかった。何か相談事があっても話そうとするとチッと舌打ちされて、『そんなことくらい自分で決めろよ』と言われるだけでしたから。夫が言うように家庭のこと、夫の親戚付き合い、近所付き合い、子どもたちの学校でのこと、将来のこと。とにかくすべて私ひとりでやってきた。夫はゴミ出しひとつしたことがありません」
昭和の会社(仕事)人間は、男は外で仕事、女は家で家事育児が当たり前でしたが、そこは妻へのリスペクト(敬意)が絶対必要なんです!

テレビを見ながら、予想通り居心地が悪くなってきました。何やら後ろめたい気持ちと言い訳とが心の中を交差しています。坊守のニヤ顔も何となく感じます。

さて、もしも坊守から離婚届を差し出されたら…
「子育ては一応終わっているが、まず食事・洗濯・掃除、寺の会計、ご近所との関係等々、とても自分ひとりでは手に負えない。困る!」という思いがまず起こります。「辛い思いをさせ苦しめていたのか」という一番大切な点に思いが至るのはその後、いやもっと後、ずーと後かも知れません。どこまで行っても、私ファーストの自分が見えてきます。夫のみなさん、どうでしょうか。

おそらく、多くの人は私ファーストから逃れることは出来ません。大切なことは、それをちゃんと認めた上で、相手をリスペクトすることだと思いました。番組では、それを行動で示せと言っていました…。